噓風堂の店主は若い。年齢を聞くと「二十九の前後です」と答えた。前後という言葉に含まれる幅を確認しようとしたが、ちょうど湯切りが始まり、質問はその音の中へ落ちた。

ラーメン作りで大切にしていることを聞くと、「先に決めすぎないこと」と言う。スープの濃度、麺の硬さ、香味油の量。すべて数値で管理しているが、最後の一滴だけは勘で入れるそうだ。

「勘というより、返事ですね」と店主は言った。何への返事かと聞くと、少し間を置いてから「注文です」と笑った。自然な笑顔だった。自然すぎて、こちらが遅れて笑った。

創業については、答えが少しだけ揺れた。最初は去年の冬、次は三年前の春、最後には「先代がいたことにしています」と言った。冗談かどうかは、店主の表情からは読めない。

店内には古い木材が使われている。どこから持ってきたのか尋ねると、「元からです」と言う。新装開店の話をしていたはずなのに、元から。ノートにはそう書いてある。

最後に、読者へ一言をお願いした。店主は腕を組み、少しだけ考えた後、「またお待ちしています」と言った。まだ来ていない人にも、そう言うのだと思う。